高山病で死なないために

2000メートルを超える地域への旅行には高山病の危険

最近は世界各国の様々な場所へ旅行することが出来るようになりました。かつては一部の登山家や特別の目的を持った人しか行かなかった高地にも、飛行機やヘリコプターなどを使って簡単に行けるようになってきました。ところがその結果、旅行者本人が意識せずに標高の高い地域に滞在することにもなっているのです。高山病というと特別な登山家だけのものと思われがちですが、1800mから2500mを越える地域への旅行にでは高山病の危険が控えています。日本では富士山の五合目で2300m、頂上で3776mですから、富士登山をされる方でも高山病の危険はあります。最近人気の海外旅行の目的地、南米ペルーのクスコ(Cusco 3000m)、ボリビアのLa Paz(3444m)、チベットのラサ(3749m)などへ行くときには特に注意が必要です。

高山病の掛かりやすさは生まれつき

それではどんな人がそしてどんな状態の人が高山病にかかりやすいのでしょうか。それは実際に行ってみないと判らないのです。

この高山病になりやすいかどうかは、それぞれの個人による差が大きく、なりやすいかどうかを調べる方法もありません。また、今までの経験によれば、高山病のなりやすさは生まれつきのもので、次第になれることもなく、トレーニングによって改善されることもありません。

もしあなたが、うっ血性心不全や呼吸不全の状態であれば、このような高地への旅行を決める前に主治医の先生に相談することをおすすめします。担当の先生が高山病に対してよく判らないとおっしゃったら、日本旅行医学会や旅行医学に詳しい先生とご相談ください。 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患の方は高地でも、高山病が発生する危険度に通常の方と差はありません。ただ、もしその発作が、医療施設が不十分な遠隔地で起きた場合には、適切な治療を受けられるのかどうかという心配が残ります。

高山病の症状

高山病は山酔い:acute mountain sickness (AMS), 高地脳浮腫high-altitude cerebral edema (HACE), それに 高地肺浮腫high-altitude pulmonary edema (HAPE)という大きく3種類の症候群に分けられます。

山酔い(AMS)は一番よく見られる症状で、1200~1800mの高度でも発症し、2700m以上の高さに急にのぼったときによくおきます。症状は二日酔に似ていて、頭痛や倦怠感があり食欲が無く、吐き気があり時には嘔吐します。この山酔いの症状が現れるのは遅く、普通高地に到着後6から12時間後に始まります。

高地脳浮腫(HACE)は山酔いが激しくなった物です。山酔いの症状に加えて倦怠感が強くなり、考えがまとまらなくなり、縦列歩行テストで運動失調が見られます。縦列歩行テストとは、真っ直ぐな線上を前の足のかかとに後ろの足のつま先をつけながら歩く検査で、高地脳浮腫(HACE)があるかどうかを見分けるのにはもっとも良い検査です。この縦列歩行テストを行って線からはづれる様なら高地脳浮腫(HACE)があると考えて、すぐに高度の低い地点におろすべきです。

高地肺浮腫(HAPE)は単独でおきたり、高地脳浮腫と一緒におきてきます。最初の症状は運動をした時の息切れが激しくなってくることです。そして、次第に安静時にも息切れがひどくなってきます。通常は数分安静にして息切れが無くなるかどうかで診断できます。この時点で、高度の低い地点におろすことが絶対に必要です。

すぐに高地から降りれば死ぬことはない

高地を旅行する方に高山病について一番理解しておいて欲しいことは、高山病を完全に予防することではなくて、高山病で死なないことです。高山病の症状の発現や病気の進行は非常に遅く、十分予測が可能です。天候に遮られたり地理的に下のおろすことが不可能であるような条件がない限り、きちんとした対応をとれば高山病で死ぬことはないのです。

高山病で死なないために知っておいて欲しいのは次の3点です。

  • 1:高山病の早期症状を知って、その症状の出現が判るようにする。
  • 2:高山病の何らかの症状があったら、それ以上高い地点に上がらない。
  • 3:同じ高度で休んでいても症状が悪くなったら低い地点に降りる。

おかしかったらすぐに低い地点まで降りるというのが鉄則です。周りの人と歩調を合わせようと言うのが一番危険です。

団体旅行の方が危険!?

調査によると、高度の高い地点への旅行では団体旅行のほうが個人旅行よりも高山病で死にやすいといわれています。たぶん団体としての重圧があったり、日程に余裕がないためでしょう。どのような状況にあっても、ひどい高山病とならないためには、高山病の症状がすっかりおさまるまでそれ以上高い地点に登らないことです。命の方が大切ですから。

子供と妊婦

子供は成人よりも高山病にかかりやすく、また小さい子供は高山病でみられる食欲不振や倦怠感などの不定愁訴をうまく話すことが出来ません。また、妊婦については高地に短期間行った場合の胎児への影響についての研究や報告はありません。しかし、ほとんどの専門家は妊婦は出来るだけ3600m以下にいることを勧めています。

高山病の治療

高山病の予防及び治療に効く薬は3種類あります。

その中で一番使いやすい薬はAcetazolamide (Diamox_)です。この薬を高地に上がる前に飲んでおけば山酔いを防止することが出来ます。また症状が現れてからでも服用すれば早急に改善されます。この薬の作用により、血液が酸性となるために呼吸が刺激されて増加し、その結果高地に順応することができます。通常の投与量は250mgを1日2回高地に行く前の日から服用します。125mg1日2回でも同様の効果が得られて副作用が少なくなると言われていますので、私どもは125mg1日2回の服用をお勧めしております。この薬に対するアレルギー反応は稀ですが、Acetazolamideはスルフォンアミド化合物であるため、サルファ剤にアレルギーのある方の服用はおやめください。

デキサメサゾンは副腎皮質ホルモン剤ですが、山酔いと高地脳浮腫の予防と治療に効果があることが知られています。この薬剤により高山病の症状は改善しますが、高地に順応する効果はありません。そのため、服用している間だけ症状を抑えますので、もし高地にいく途中で薬が無くなったら、高山病の症状が急に現れる危険があります。高地に旅行される方は、まず山酔いの防止のためにAcetazolamideを服用して、激しい症状が出たときのためにデキサメサゾンを持っていた方がよいでしょう。投与量は6時間毎に4mgです。

ニフェジピンは高地肺浮腫を起こしやすいに人に対して、高地肺浮腫を予防し改善することが知られています。投与量は8時間毎に10mgです。

高山病予防の一番良い方法は、ゆっくりとした計画

ほとんどの旅行者にとって高山病予防の一番良い方法は、ゆっくりとした計画を組むことです。もしこれが出来なければAcetazolamideを予防的に使用して、緊急のためにデキサメサゾンとニフェジピンを持っていってください。

薬の入手方法

残念ながらこれらの薬は、処方箋なしで一般の薬局で購入することは出来ません。お医者さんに相談して処方してもらってください。保険の適応にはなりません。

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